エストリビューター理論 / Estributor Theory(2011年)

EWA公式理論

基本情報

項目 内容
提唱年 2011年
提唱 一般社団法人日本電子出版作家協会(EWA)
分類 EWA公式理論
日本語表記 エストリビューター理論
読み方 えすとりびゅーたー・りろん
英語表記 Estributor Theory

概要

エストリビューター理論は、著者自身が企画・編集・製本・マーケティングを担う「総合電子出版代理人」としての新しい役割を定義した理論である。

米国作家J.A. Konrath氏が2009年に提唱した職業概念を、EWAが日本の電子出版事情にあわせて再定義・体系化した。

EWAはこの理論に基づき「公認エストリビューター」認定制度を確立し、電子出版の担い手を組織的に育成する基盤を構築した。

背景と問題意識

電子書籍の普及により、誰でも書籍を出版できる時代が到来した。

しかし、出版プロセスには企画、編集、製本、マーケティングといった多岐にわたる工程が存在し、著者が一人でこれらを遂行することは容易ではなかった。

従来の出版業界では、これらの工程はそれぞれ編集者、デザイナー、流通業者といった異なる専門家が分担して担っていた。

個人の電子出版においては、こうした支援体制が存在せず、著者は独力で全工程をこなすか、高額な外部委託に頼るしかなかった。

この構造的課題に対し、著者を包括的に支援する新たな職能の必要性が認識されるようになった。

理論の定義と内容

J.A. Konrath氏による原義

「エストリビューター(estributor)」は、米国の作家J.A. Konrath(ジョセフ・アンドリュー・コンラス)氏が2009年12月1日、自身のブログ「A Newbie’s Guide to Publishing」に投稿した記事「JA Konrath’s 2010 Ebook Predictions」の中で初めて使用した言葉である。

同記事は翌2010年の電子書籍市場に向けた11のトレンド予測を発表したもので、その第6の予測として「Estributors will become common.(エストリビューターが一般的になる)」と明記された。これがこの言葉の誕生の瞬間である。

日本では、hon.jp編集部が2011年7月6日にこの概念の情報公開を行った。

estributorは「ebook(電子書籍)」と「distributor(流通・配信業者)」を掛け合わせた造語である。

Konrath氏は記事の中で「作家がいるところには、作家を支援し、その収入の数パーセントを受け取る人々が存在するようになる」と記し、インディーズ作家のために編集、フォーマット変換、各ストアへのアップロード、表紙デザインなどをワンストップで引き受ける新しい形の万能代理人を想定した。

この支援により「作家自身は執筆に専念できる」というのが、Konrath氏の描いたエストリビューターの本質的な役割である。

Konrath氏はまた、そのビジネスモデルについても言及しており、売上の15%程度を対価としてエストリビューターに実務を任せることが、電子書籍作家にとってもっとも合理的であると主張した。

この予測はその後現実のものとなった。2010年〜2011年にかけて、米国では旧来の出版モデルが変化する中で、文芸エージェントや個人コンサルタントが「エストリビューター」としての看板を掲げて業務を代行するようになり、Konrath氏自身もその後の振り返り記事において予測の的中を報告している。

EWAによる再定義

EWAでは、日本の電子出版事情にあわせてエストリビューターを次のように再定義した。

「総合電子出版代理人。企画、編集、製本、マーケティング等、著者の書籍が著者の出版目的を達成するために、ベストな形になるように支援する者。」

Konrath氏の原義が「作家の代わりに各種業務を引き受ける代理人」であり、対価として売上の一定割合を受け取るビジネスモデルを想定していたのに対し、EWAの定義は「著者の出版目的の達成」を中心に据えている点に特徴がある。

単なる業務代行ではなく、著者の成功にコミットする支援者としての職能を明確化した。

公認エストリビューター制度

EWAは2011年からの活動で蓄積した経験・知恵・情報を統合し、「公認エストリビューター」認定制度を確立した。

この制度は、エストリビューター理論に基づく実践者を組織的に育成・認定する仕組みである。

EWAが主催したエストリビューターセミナーは、産経新聞グループ総合経済情報紙「フジサンケイ ビジネスアイ」(2011年11月4日)に掲載された。

その後、本理論を体系的にまとめた書籍がインプレスより『電子出版のプロデューサーになろう エストリビューターとして活躍する方法』として出版されている。

EWA理論体系における位置づけ

エストリビューター理論は、電子書籍スマホコンテンツ理論(2011年)が「電子書籍とは何か」を再定義したのに対し、「著者は何をすべきか」という次の問いに応答する理論である。

電子書籍がスマホ向けデジタルコンテンツとして無限の可能性を持つことが示された以上、その可能性を実現するための担い手が必要となる。

エストリビューター理論は、その担い手の役割と職能を定義した。

この「著者の役割の再定義」は、書籍資産戦略2.0(2025年)における「電子書籍をどう資産化するか」、パーミッション・パブリッシング(2026年)における「著者は何を売るか」という問いへと発展していく基盤となった。

参考文献・出典

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